病院の救急外来(ER)に入って、救急救命士が最初に「うわっ、難しそう……」と壁を感じるのが「血液ガス分析(血ガス)」ではないでしょうか。
学校では PH が7.35~7.45が基準、といった理屈は習いますが、現場ではもっと泥臭く、そしてエキサイティングな使い方がされています。今回は、ER救命士が知っておくべき「血ガスの読み方」の入り口を整理します。
血ガスは「身体の悲鳴」を数値化したもの
救急隊が現場で見ているのは SPO2(外側の酸素)ですが、血ガスで見ているのは「内側の酸素、二酸化炭素、そして酸性度」です。 搬入直後の患者さんの血液を、採血し、専用の機械に入れると、1分ほどで「身体の今」がレシートのような紙で出てきます。
ERでまず見るべき「3つのポイント」
全部の項目を完璧に覚える必要はありません。まずはこの3つに注目しましょう。
| 項目 | 記号 | 現場での見方 |
| 酸性度 | pH | 7.35〜7.45が正常。 pH<7.35 アシドーシス 7.35<pH アルカローシス |
| 二酸化炭素 | pCO2 | 溜まりすぎていないか?(換気不全)。特にCOPDの患者さんなどで重要です。 |
| 乳酸値 | Lactate | 救命士が一番見るべき項目! 組織が酸欠で「泣いている」証拠。ショックの重症度を測る指標です。 |
「Aガス」と「Vガス」の違いに注意!
ここが学校ではあまり教わらない実務のポイントです。
- Aガス(動脈血ガス): 橈骨動脈や大腿動脈などから採血。酸素の状態(SPO2)を正確に知るためのゴールドスタンダードです。
- Vガス(静脈血ガス): 普通の点滴ルートから取った血液。酸素の値は参考になりませんが、pH や pCO2、Lactateなどはこれでも十分に傾向が分かります。
なぜ救命士が血ガスを知る必要があるのか?
「血液の分析なんて医師や技師の仕事では?」と思うかもしれません。しかし、病院救命士が数値を読めると、以下のようなメリットがあります。
- 緊急度の予測: 「pHが6.9、Lactateが10超えてる。これはすぐに挿管の準備が必要だ」と先回りできる。
- 処置の効果判定: 胸骨圧迫中に血ガスを回し、数値が改善していれば「今のマッサージは質が良い」と判断材料になる。
- 申し送りの深み: 医師に「SpO2が低いです」と言うだけでなく、「pCO2が溜まってきているので、そろそろNPPV(非侵襲的陽圧換気)の検討ですか?」と一歩踏み込んだ提案ができるようになります。
まずは結果を拾うところから始めよう
はっきり言って、最初は数字の羅列にしか見えません。
まずは、検査機から出てきた検査結果を拾い、先輩たちの「うわ、Lactate高いな」「CO2溜まってるね」という会話と数値を照らし合わせることから始めてみてください。
「身体の中の声」が数字として読めるようになると、ERでの仕事はもっと面白くなりますよ。

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