救急隊や現場対応にあたる皆さんは、熱中症の重症度判定で「深部体温を測るまで動けない」ともどかしく感じたことはありませんか?『熱中症診療ガイドライン 2024』で登場した新概念「qⅣ度(quick Ⅳ度)」が、その悩みを解決します。
今回は、現場で命を救うための「攻めの判断」について解説します。
1. 「qⅣ度」とは何か? — 深部体温測定を待たない迅速な推定
従来の「Ⅳ度(最重症)」は直腸温などの深部体温が40.0℃以上であることが条件でしたが、現場でこれを測定するのは困難です。 そこで導入されたのがqⅣ度です。
【qⅣ度の判断基準】
- 体温: 表面体温が40.0℃以上、または皮膚に明らかな熱感がある。
- 意識: 重度の意識障害がある(GCS ≦8 または JCS ≧100)。
この基準のポイントは、「深部体温の測定を待たずに、即座に重症とみなして処置を開始してよい」という点にあります。
2. なぜ「推定」で動く必要があるのか? — 1分の遅れが死を招く
なぜ正確な診断を待たずに行動すべきなのでしょうか。データによると、qⅣ度に該当する症例のうち、深部体温が不明・未測定のままだった群の**死亡率は約37%**に達しています。 一方で、深部体温を測定し「Ⅳ度」と確定させた群の死亡率は約21%でした。
この差は、「冷却処置(Active Cooling)の開始が遅れたこと」に起因すると考えられています。 重症熱中症では、体温上昇の持続時間が臓器障害に直結するため、「冷却の遅滞」こそが最大の死亡リスクなのです。
3. 現場でまずやるべきこと — 「Cool First, Transport Second」
qⅣ度と判断したら、救急車を呼ぶのはもちろんですが、その到着や搬送を待つのではなく、その場でActive Cooling(積極的な冷却)を開始してください。 これをスポーツ医学の概念で「Cool First, Transport Second(まず冷却、搬送はその後)」と呼びます。
【現場でできるActive Cooling】
- 蒸散冷却法: 全身を水で濡らし、扇風機やうちわで強力に仰ぎ、気化熱を奪う。
- 局所冷却: 首、脇の下、足の付け根(鼠径部)などの太い血管を氷嚢で冷やす。
- 冷水浸漬(CWI): 準備が可能なら、氷水に全身を浸すのが「ゴールドスタンダード」です。
4. 冷却のゴールは「38.0℃」
従来の冷却法を用いる場合、目標体温は38.0℃に設定します。 理由は、冷却を止めた後も体温が下がり続ける「過冷却(オーバーシュート)」を防ぐための安全マージンです。 ※ただし、高度な自動体温管理機器を使用する場合は、37.0℃を目標とすることもあります。
まとめ:救急現場の皆さんへ
「熱中症かな? 意識がおかしいし、体もすごく熱い」 そう感じたら、それがqⅣ度です。深部体温の確定を待つ必要はありません。
「冷却の遅れを生じさせない」。 このシンプルな行動が、目の前の患者さんの予後を劇的に変えます。今年の夏も、攻めの冷却で命を守りましょう!

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